矢吹シェフの見聞録 2008

  20年1月

   本年もどうぞよろしくお願いします。

   
   今年は、おかげさまで秋に10周年を迎えます。
   
   この日の出のように常に新しい気持ちで

   日々、精進して参りますのでどうぞよろしくお願いします
    


  20年2月

    ご無沙汰してました。
     ここのところ、天候不順で海も時化の日が多く、
     魚の仕入れも一苦労。
     何かおもしろいものはないかと、日々探しまわる。
     まあ、珍しさということで、
     「腰折り海老」
     厳密にいうとコシオリエビ類のなかの
     「オオコシオリエビ」
     ほとんど市場に出ることはない。
     漁師の味噌汁の材料。
     一部地域では珍重される。
  
     まあ、たまにはこういう物もいいんじゃない。
     あまくておいしいよ。鮮度はいいからね。



20年2月                  
熊本産「早掘り筍」
春といえばフランスではアスパラガス。
日本だとやはり筍でしょう。
まだ、地中にある筍を掘り出す為、エグミはない。
鹿児島から始まり熊本、福岡と筍前線は北上する。
春はもうそこまで来ている。

が、今年の冬は寒いねー。


20年2月                  
小田原産「ホタルイカ」
もう春がそこまで!
ほとんど知られていない相模湾のホタルイカ。
漁獲量はほんの僅かだが相模湾でもホタルイカが獲れるんです。
あまりにも稀少な為、流通するのはごく一部。
朝とれたものを、その日に提供します。
富山のものが有名だが、時間差を考えるとその鮮度の違いは明らか。
(富山→築地→料理屋)どんなに早くても水揚げされてから1.5日かかる。
通常、2日以上。
うちの店は6〜7時間後。(小田原→国立) セリの時間があるからね。
まあ、これが姿を現すと相模湾も、もうすぐ春の海。

 
瀬戸内からは「飯蛸(イイダコ)」
春に産卵を迎えるため、この時季、子(飯)持ち

以前、紹介した瀬戸大橋がかかる岡山の鷲羽山。
この山のふもとにある下津井漁港から
  
  江戸前からは「コハダ」
  「シンコ」は5月の声を聞いたら江戸前鮨職人が
  大騒ぎだが、
  最近は、コハダの旬が特定しずらい。
  それほど、「江戸前のコノシロ(コハダ)」は激減している
  東京で出回るコハダは三河、九州のものがほとんど
  とうぜん、流通時間がかかる。
  江戸前のコハダは有名鮨屋さんか、
  または国立のル・クリマへ 
 


20年2月                  

小田原と大磯の間に位置する「二宮」の定置網で獲れた「花鯛」
この日は漁獲量も少なく2Kだけ
真鯛と姿がにているが違うもの。正式には「血鯛」
ホタルイカとこれが獲れだすともうじき春。
確実に春は近づいている。
鮨ネタの春日子(カスゴ)は真鯛、血鯛、黄鯛の小鯛の総称だが、
江戸前を誇るなら、この「花鯛」
前回のコハダ同様に江戸前寿司には欠かせない。
「あっ、うちは鮨屋じゃあなかった」


20年3月                  
春の海!到来!
今、小田原早川港では魚種、漁獲量とも増えてます。
鮟鱇、平目、鯛が舞う。竜宮城のごとく。
今日は、沖合い波が高く釣りものは少なかったが、
定置網には風に流されたカワハギやキスがはいる。
もちろん、そのほかにも活魚がたくさん。
こうなると、競りの時間が長くなる。
終わりまで待てない仲買いや魚屋さんは引き揚げる。
競りが競りでなくなる。当然、安くなる。

安く仕入れる→安く提供する→安く食べられる→幸せ。
今が、チャンス!

「ここだけの話、活け鮟鱇なんて12月の築地での価格の十分の一」  


20年4月                  
ごぶさたしてました。もう、4月も半ば。
春、真っ只中。
海はというと、すでに初夏の兆し。
初夏の釣りでかかる豆アジ。5〜7センチ級の鯵を「ジンタ」と呼ぶが、
写真のアジはワインコルクよりも小さい。
小田原で獲れたもの。
これだけ小さいと一般では流通しないでしょう。
地方の漁港ならでは。
水揚げされたばかりのものを、から揚げでいただく。なにもつけない。
小さいながらも、力強い味わい。まさに命をいただく。
出回り始めた天然の山菜も然り。生命の息吹。
身体にしみわたる。
まあ、必要な分だけ少しだけね、分けてもらいましょう自然から。


20年5月                  
水中写真家 中村征夫氏の写真展開催中ということで日本橋へ。
今回のテーマは「命めぐる海」
彼のライフワークである東京湾の写真をはじめ、ジープ島や紅海の
写真などまさに命をみせられる作品の数々。
いい目の保養になりました。
その後、快晴の東京湾へ船で出る・・・・穏やかな時間


20年5月                  
小田原早川漁港で
2畳分位のマンボウが水揚げされた。
マンボウ自体は珍しくないのだが、
今回は活きたまま水揚げされた。
ただ、でかいので競りのあと市場でさばいたものを
一部わけてもらってきた。
写真は肝と百尋「ひゃくひろ」(小腸)と身。
まだ縮む。この鮮度はそうそうないよ。
肝和えとか酢味噌和えとか・・
百尋もただ炙ってもいいな・・・

 
羅臼からは、「サメガレイ」
ぬめりが多く、鱗がザラザラしているので敬遠されがちだが、
じつは非常に旨いカレイ。
煮つけはカレイの中で一番という実力者だがあまり知名度はない。

ところが、今年の1月に時の人となる。
「14年前からの手紙をカレイが届ける!」でニュースになったのを
覚えている方も少なくないはず。
銚子漁港で底引き網で漁獲されたカレイの身体に
手紙が張り付いていたのです。
なんでも、川崎の小学生が風船につけて飛ばしたものだったらしい
特殊な紙と油性ペンのおかげで、14年後に本人に戻ってきたという事。
その時の配達人がこのサメガレイ。
ただ、ニュースではカレイとしか紹介されてなかったが、
一部サメガレイの報道も。

 その他、琵琶湖から天然稚鮎。
      青森から極上花もずく。
      有明から天然地ハマグリ
      山形から天然こしあぶら。
      小田原から麦イカ、キントキ、カマス、アジ・・
      その他もろもろ・・・
      


20年5月                  
岡山産「ムール貝」
びっくりだよ!この大きさ!
ここまででかいのははじめて見た。
浅利が小さいわけじゃあないからね。
まさに手のひらサイズ。18センチはあるな。

 


20年6月                  
この時季、小田原早川漁港で秋刀魚の稚魚、幼魚が
少量だけ水揚げされる。
干物にされ稀少品「針子」になる。
写真は生のもの。
こんなに小さくても味はしっかりサンマ。
当店では、そのままカラ揚げ

 



20年月6月                  

 相模湾で獲れる「セミエビ」と「ゾウリエビ」
 土佐や紀伊など南方で獲れるこの種は大型のものが多いが
 相模湾で獲れるものは型が小さく、
 尚且つ漁獲量がごく僅かなため流通することはない
 刺身でも加熱しても旨い海老

 


20年6月                  
「鱧」の季節になりました
梅雨を飲んでおいしくなるといわれる鱧
前にもお話ししましたが、中国産に比べ国産は獰猛。
その獰猛な活きの良い鱧を相模、駿河、瀬戸内から選び提供します。
さっと湯引きにしたものや、香ばしく焼き上げたものもおいしい。
写真は毎年つくるもので、
「大分産活け鱧とアスパラガスの春巻き」
付け合せは宮崎マンゴーと夢咲フルーツトマトを使った甘酸っぱいソース
ここのところ宮崎マンゴーも高くて手を出しませんでしたが、
台湾マンゴーが市場に出始めたおかげで、少し競値も落ち着いて
いるようです。おいしくても高くちゃあねー

 


20年7月                  
小田原産「朝日蟹」
三浦半島を境に相模湾以西に生息する。
東京市場で出まわるこの種は、「スパナクラブ」と呼ばれる
オーストラリアなど南半球からの輸入ものがほとんど。
九州、四国地域では、国産ものも流通するが、東京市場では稀。
今回、入荷したものは早川漁港に活きたまま水揚げされたもの。
この日は4杯だけ。
まあ、滅多に獲れるものではない。
写真のように、生きていても赤いところから「旭(朝日)蟹」
たっぷり詰まった純白の身はあっさりとしておいしい。
申し訳ありませんが、こういったものは御来店のタイミング次第。
 

20年8月                  
浜田産「のどぐろ」(学名「アカムツ」)
近年、ぐんぐん値が上がる高級魚。幻の声も(またかよ)
脂も身に均質に入り刺身でも焼いても煮てもおいしい魚。
日本海側で多く獲れ、需要も多い。加賀料理には欠かせない魚。
この魚は干物でもちゃんとした日本料理と呼べるもの。それほど旨い。
写真の浜田沖で獲れた個体は、脂肪含有率が
他の漁場で獲れるソレに比べて高い。

呆れてしまう話としては、
日本海側の需要が多いため、房総や三河辺りで獲れたアカムツが日本海の産地に送られる。観光客がそれを喜んで食べるのはいいが、
東京の料理屋が日本海からの産直だと出戻りの「のどぐろ」を提供する。
(送る側の業者に責任があるのか、使う側が見抜けないのか)
偽装するつもりはないのだろうが、流通事情でよくある話。
流通コストが乗った上、鮮度も下がる。
のどぐろに限らず、陸の旅をする魚はよくいるんだよ。
 

20年8月                  
小田原「伊勢海老」解禁!

今はなきフランス料理店「パシフィック・ハーバー」の
名物料理「伊勢海老のウニソース焼」を知っている方はいるだろうか?
実は5年間くらい料理長として勤めさせて頂いた。
その後、魚の卸業を経て「ル・クリマ」を開業。
今年の秋で10周年を迎えるわけだが、いまだにウニソース焼の
問い合わせがたまにある。
と、いうことで復刻します。ただ、予約のみ。
パシフィック・ハーバーでは定番メニューの為、輸入の海老に頼っていましたが、当店では相模湾で獲れた活けものを提供します。
三日前位までに予約していただければ、用意できると思います。
懐かしいと思う方、興味のある方、是非どうぞ。
     こんな感じ。

20年8月                  

    今年も、行って来ました。
    シュノーケリング。
    場所は、西伊豆浮島海岸。
    危ぶまれた天気も持ち直し、ご覧の晴天に。

    今年は魚種が豊富です。
    此処は、この時期、小さなイカが泳ぐ。
    鯵やイナダの影も。
     写真はソラスズメ

   ネンブツダイのツガイもチラホラ。
   
   岩場の中にタコ発見。ということは・・
   ホラ、いた!ウツボ。
   
   ボラもいっぱい。
   
        帰りは直ぐ近くの町営の温泉で
        リフレッシュ。
  
        少し、早めに帰路に着いたので
        ギリギリ間に合いました。
        「夕暮れの富士山」
        大観山から望む。

20年9月                  

    「ベルギーロイヤルコレクション」
   
    ベルギー王室所蔵の浮世絵、錦絵の数々
    観てきました。
   
    写楽に北斎、広重、国芳 等
    日本初公開の作品も出て
    非常に良い目の保養になりました。
 
   

20年9月                  
いまや大変稀少になった「天然舞茸」

たまに、見かけるよというのは
天然と謳いながら実はほとんどが栽培物。天然仕上げってやつ。

本物の天然物は、松茸を上回る稀少性で値段も目が飛び出るほど。
そのかわり、味も絶品。

安く仕入れました。是非、お試しあれ。
何で安いかというと、今回カナダから初上陸。いちはやく皆様に。
 

20年10月                  
おかげさまで、11月に10週年を迎えます。
これもひとえに皆様の御愛顧の賜物と深くお礼申し上げます。

この度、感謝の気持ちを込めて
10周年特別コース¥6300税込をご用意させて頂きました。
実質8000円相当の内容です。
お客様だけの特別厳選メニューになりますので
誠に恐縮ですが、御予約は2日前までにお願いします。

11月20日まで、昼、夜とも提供させて頂きます。
よろしく、お願いします。
 

20年11月                  
幻の魚「アラ」
まあ、なかなか食べられる機会はないでしょう。
小田原漁港でも、写真サイズでさえ年間指折り数える程度。
1メートル超は滅多に見ない
とにかく、おいしい魚。
 
余談ですが、たまに築地でアラの名でうられているのは「ハプカ」   南半球に生息するほぼ同種の魚。
こっちがクエ   

  勘違いされてる?(知らない)方が多く
  世間でアラと呼ばれているのはクエのこと。
  食材事典などでも、間違えているものがあるほど。
 
  玄海灘で獲れたクエを北九州でアラと呼び、
  大相撲の九州場所で 
  力士が食べるアラ鍋で有名になった。

  クエも幻の名が高いが、学名「アラ」はそれ以上。
  
  10周年特別コースは、
  こういったスペシャルものがでるかも!

 20年11月                  
 休日、関東圏は雨。
 陽射しのとどく紅葉を見たいと東海まで足を延ばす。
 着いたところは、東海道二十之次「丸子宿」
 写真は弥次さん喜多さんで知られる十返舎一九「東海道中膝栗毛」の
 中で舞台にもなった名物茶屋「丁子屋」
 400年変わらず作られる「とろろ汁」を食べてきました。
 
 
  ご覧の「丁子屋」は、安東広重の「東海道五十三次」にも
  出てくる茶屋。
  かの松尾芭蕉もこのとろろ汁を題材に一句詠んでいる。
  参勤交代の大名も食べたとろろ汁。
  そんな歴史にふれて来ました。
 
  で、とろろ汁の写真は?
  ありません。食べるのに夢中ですから・・
       
その後、大井川上流をめざし
山道をひた走る。ひた走る。
もうひとつ走る。

着きました。「寸又峡」
思いのほか寒くない
山深いのにまだ紅葉は色づきはじめ。
写真は「夢の吊橋」
              
       何が夢なのか・・?
       30センチ幅の板が渉っているだけ・・・
       揺れる・・怖い・・
       日が暮れる・・・・
       あっ!月だ。
       
       帰りの山道、視界の中の光源はお月様だけ。
       うさぎも餅搗いているから
       安倍川もち買って帰ろう。
       
       

20年11月                  
    ジビエの季節到来!
    
    いのしし届きました。
    南伊豆で罠で生捕りにした2才位のオス
    ドングリなど木の実を食べ良質の脂を蓄えた個体。
    山の清水で血抜きしたもので
    一般に出回っているものとは世界が違う。
    いのしし嫌いもだまされたと思って食べてご覧。
    熟成が必要なので、12月の頭位が食べ時かな。

     
  「大浦ごぼう」

  現在は千葉八日市場市大浦の10件ほどの
  農家しか栽培していない稀少な極太ごぼう。
  栽培されたほとんどが成田山新勝寺に奉納される。
  藤原秀郷が平将門を討つための酒宴で
  このごぼうを使ったという伝説が残る
  伝統野菜。
  近年は保存会もできているらしい。

  
   
      信州長野の鬼無里からは
      「野生のナメコ」
      あえて天然とは言いません。
      野生です。
      自然栽培ものではありません。
    
      独特のぬめりと歯切れが持ち味。

20年12月                  
三浦半島走水産 活〆「花鯛」
まもなく産卵期。脂たっぷりのってます。
分厚いです。

よく似る真鯛は1mまで育つが、この血鯛(関東では花鯛)は
最大級のものでも40cm。
写真の血鯛もその位。立派です。
春に獲れる小型のものは酢〆にするとおいしいが、
このサイズだとやはり刺身がいい。

なかなかないよここまでのサイズ。
浦賀水道の急流でもまれてます。
 

20年12月                  
現実逃避。
調理師学校の講師を終え、その後、山梨へ。
今回は此処「ほったらかし温泉」
着いたのは日が暮れてから。
ご覧の様に山梨市、笛吹市、甲府市が眺望できる立寄り温泉。
写真は資料から。
この真下にも岩風呂がある。
    
    
    すぐ近くの笛吹フルーツパークからの
    夜景は、新日本三大夜景なんだそう。
    そのわりには、平日のせいか誰もいない。
    確かにきれいなのだが、三大?
    写真のようにはいかないか?
    
    まあ、久しぶりの温泉。
    気持ちも身体もほぐされた。